フェニックス通信 第23号

八重樫 東のフェニックスバトル28直前展望
こんにちは八重樫です
大変ご無沙汰しています。

 あの川嶋さんのアツい世界戦から早三ヶ月が経とうとしています。前回は自分が欠場ということもあり、川嶋さんの世界戦及びその他のカードの見どころを解説させていただいたのですが、意外にもご好評いただけたということもあり、再登板する運びとなりました。

 ただ自分としては今回大事な再起戦前ということもあり、試合に集中したかったため、当初難色を示していたのですが、

 会長から「内藤君を見ろ。あれだけテレビに出ていたのに、ちゃんといい試合しただろ。大丈夫だから書け!」とツルの一声で決まってしまったというのが実際のところです。(苦笑)



 さて肝心の試合の方なんですが、今回は
細野とWBC米大陸王者との戦いがメインとなっています。僕の出番はセミファイナルですけど、決して負けていられませんね。なんだかんだ言って10ヶ月もリングを留守にしてしまったので、忘れている方も多いでしょうが、ここは一発細野を喰うぐらいのド派手なファイトをお見せして、「やっぱり八重樫は弱くない。」って再認識してもらいたいです。

 また今回は沖縄のジムから大橋ジムに移籍してきたアマエリート出身の世界ランカー
翁長 さんのお披露目、岡田上間の上位ランカーへのチャレンジマッチ、松岡森島の新人王トーナメント1回戦と、それぞれの選手がおのおののテーマを持ってリングにあがるのも見どころですね。

 川嶋さんが引退された今、その抜けた穴を埋めんと各選手(もちろん僕も)が自覚を持って、新しい大橋ジムの再出発をアピールしてくれるのではないでしょうか。とにかく今回は上から下まで注目のカードが目白押しなんで、どうか1試合目から最後まで目を離さずにリングを注目して下さい。
<メインエベント 10回戦>
細野 悟(東洋太平洋フェザー級2位、大橋) VS
リカルド・エスピノーザ(WBC米大陸スーバーバンタム級王者、メキシコ)
 今回はホントに見どころだらけなんで何から始めたらいいのか非常に困ってしまうのですが、とにかくメインエベントということもありますので、細野の試合から見ていきたいと思います。

 昔から「風雲昇り龍」という言葉がありますけど、今の細野にはその言葉がまさにぴったり当てはまりますね。もともと凄いヤツなんですけど、今の細野の勢いは半端じゃないですよ。以前の細野って、調子のいい時はとてつもなく強かったんですけど、一歩リズムが狂うと「これが同じ人?」って思うぐらいしょっぱい試合をしてましたよね。僕は前回のレポートでこの現象を「相手が強くて試合中追い込まれた時、細野は強い自分に目覚め、弱い相手だと目覚めないまましょっぱい試合をする。」と分析していたんですが、前回の真鍋選手との対戦では、その仮説が当てはまらなかったんですよね。

 どういうことかっていうと、試合前に細野とぼくで「真鍋選手は超ハードパンチャーでガンガン攻めてくるから、しっかり見ながらカウンターを取ろう。」って決めていたんですよ。ところがいざ試合が始まると真鍋選手は思いもかけず慎重に攻めてきた。つまりこれは細野にとって見込み違いだったわけで、強い細野に変身するために必要な機会を失ってしまったわけです。にもかかわらずフタを開けてみれば、終始冷静かつアグレッシブな試合運びでKOキングの名をほしいままにした強豪真鍋選手を10RにあっさりKOしてしまった。これは今までの定説を覆す結果ですよね。

 いったい細野に何が起こったのか?

 賢明なファンクラブの皆さんはもうお気づきのことでしょう。そうです。細野は何らかの刺激(不可抗力)を受けないと散漫になりがちだった集中力を、常時自分でコントロールできるようになったんですね。それを裏付ける根拠として、最近のスパーリングにおける飛躍的な向上が挙げられます。これまでの細野ってスパーでファイタータイプの選手と対戦すると、かなり格上の選手であっても圧倒的な強さを見せていたんですけど、技巧派タイプの選手と対すると、ランク外の選手でも意外と苦戦することがありました。ところが最近はどんなタイプの選手に対しても、それなりの対応ができるようになりました。つい先日も日本屈指のテクニシャンと言われる日本王者の粟生選手の胸を借り、互角に戦い抜いたという情報もあります。まだまだ発展途上ですが、細野が自身の持つ天然の強さを自在にコントロールできるようになったとしたら、とてつもなく恐ろしい怪物が誕生しますよ。

 細野は昔から中南米、特にメキシカンには強い憧れを持っていますんで、メインで強豪メキシカンと対戦できることを誰よりも楽しみにしていて、おそらくモチベーションも上がりっ放しでしょうね。まあ相手が国内強豪だろうが、メキシカンだろうが、今の細野の勢いは止められないでしょうね。
<セミファイナル 10回戦>
八重樫 東(WBC世界ミニマム級15位、大橋) VS
久田 恭裕(日本ミニマム級9位、横浜さくら)
 いや〜〜〜。自分の試合の見どころって書くのムズカシ〜〜〜ですよね。

 もちろんいろいろ期するものはあるのですが、万が一にもコケたりしたら、赤っ恥ですからね。でも弱気なことを書けばどうせ会長に怒られちゃうでしょうし、敢えて自分を叱咤激励する意味でも、ここはデカク出たいを思います。

 相手の久田選手って、日本ランキング9位ですよね。9位って言うと「何だ9位か。」って皆さん思われるかもしれないですけど、ハッキリ言ってすごく強いですよ。細野だって東洋2位であれだけ強いのに、日本9位ですからね。だから9位というのは9番目に強いってことではなく、10人しか入れないランカーの中の一人って自分は考えています。

 しかし話は変わりますけど、現実は厳しいですよね。それだけ強い相手でも万が一どっこいぐらいの試合をした日には、「やっぱり前回の世界戦は早過ぎた。」とか「八重樫は終わった。」とか言われて、逆に相手は大善戦って賞賛される。だからこそ負けはもちろんのこと、引き分けも僅差の判定も僕には許されないと思っています。

 今回のテーマはズバリ「レコンキスタ」。世界戦で失った信頼を是が非でも取り戻すことが必達事項です。久田選手には申し訳ないですけど、これまでのボクサー人生の中で最高の自分を作り上げてリングに登るつもりですんで、どうかよろしくお願いします。作戦は特にありません。いつものスタイルで、必要があれば打合いに臨むところですね。

 ただ今考えるとホント悔やまれるんですが、イーグル戦の第1ラウンドで3度も技あり級の右ストレートを喰ってしまいましたよね。特に凄いパンチではなかったのですが、やはり初の世界戦ということが知らない間に気持ちを浮つかせて、スキができてしまったのだと思います。またバッティングによるアゴの骨折も自分の戦いに対する気構えの甘さが引き起こした人災だったと思います。「グローブより大きい頭を何で喰うの?」と苦笑しながら会長に試合後指摘されたことが、今更ながらに心に残ります。

 という訳で、今回はディフェンス面の強化も充分念頭に置き、トレーニングに務めました。とにかく4月30日はプロとして、より強く、したたかに生まれ変わった八重樫をお見せしますので、どうかご期待下さい。
<第5試合 10回戦>
翁長 吾央(WBC世界スーパーフライ級19位、大橋) VS
チャンサクノイ・サックルンアルン(東洋太平洋ミニマム級11位、タイ)
 いや〜〜。びっくりしました。まさか翁長さんと同じジムになろうとは夢にも思いませんでした。だって翁長さんって言えば、アマチュアボクシング界では僕なんか足元にも及ばない超エリートで、雲の上の人でしたから。ちょうどこれまで頼りにしてきた川嶋さんがリングを去られ、それと入れ替わるようなタイミングで翁長さんが移籍してこられたことは、自分にとって心強い限りです。

 既にプロ転向して10戦(10勝7KO)していて、WBC世界19位にランクしている翁長さんですが、沖縄のジム(地元も沖縄)に所属されていたこともあって、こちらではまだ知らない方も多いと思います。翁長さんの強さと言ったら、それはもう半端なもんじゃないですよ。今回はタイの東洋ランカーが相手ということですが、翁長さんと互角に渡り合える相手を選ぶんなら、イーグルやポンサクレックくらいでないと正直、相手にならないですよ。まあ、今回はお披露目ということで、皆さんには翁長さんの必勝パターンをしっかり確認していただく良い機会ですね。

 ところで翁長さんがどんなファイトスタイルかを簡単にご説明すると、変な言い方ですが「サウスポーの技巧派ファイター」と呼ぶのが実にしっくりくるような気がします。本来川嶋さんのようにガンガン前進するのではなく、自分の距離に相手を引き込みながら高度な技術を駆使して試合を組み立てていくので、限りなくボクサータイプなんですが、ひと度チャンス目に入った瞬間、野獣のように猛然と襲いかかるところは何ともファイターなんですよね。

 その翁長さんの最大の持ち味は、何て言ってもポジション取りの絶妙さです。翁長さんはサウスポーなんですが、その特性を彼ほど試合で活かせている選手はなかなかいません。それはなぜかというと翁長さんがサウスポーである自分のパンチを最も効果的に打ち込めるポジションに常に自分の身を置いているからなんですね。これはやろうと思ってできることでは決してありません。だってボクシングでは相手も常に動いているんですから。これを実現するにはボクシングの経験と知識が豊富なだけでなく、相手の動きを瞬時に読み取り、自在に体を反応させていける感性が必要になります。単に運動神経の良さだけでは決して不可能ですね。

 翁長さんにはもう一つ強みがあります。それはズバリ「殺気を殺せる」ところです。戦っている時には少なからず殺気が出るのは当然ですよね。翁長さんの場合、その殺気をまったくと言っていいほど、相手に感じさせないんですよ。顔色一つ変えずに飄々と戦いながら、得意パンチを繰り出す射程内に相手を充分に引き付けておいて、一気にズドンと高速のパンチを打ち込むわけですから、こりゃたまらないですよ。

 殺気を気づかせる間もなく相手を仕留める。文字通り「必殺」です。「本当かよっ?」って思う方もいるかもしれませんが、これはすべて事実であり、先輩への社内営業的賛辞では決してありません。「百聞は一見に如かず」と申します。是非とも当日は会場に足をお運びいただき、僕の話が決してオーバーでないことを確認していただければ幸いです。
<第4試合 8回戦>
岡田 誠一(大橋) VS 五十嵐 圭(日本ライト級9位)
 岡田はアマ、プロを通じて僕と同期なんですけど、足の怪我で1年半に渡るブランクを余儀なくされました。昨年9月の復帰戦では勝つには勝ったんですけど、本来の岡田の実力から考えると、正直言ってまだまだの出来映えでしたね。

 岡田は中量級のウェイトなんですけど、軽量級の選手に勝るとも劣らないスピードの持ち主なんですよ。そのスピーディーな動きから繰り出される左ボディの切れは天下一品。あの怪物 細野でさえ岡田とのスパーリングでは、スピーディーな動きに翻弄されて、テンテコ舞いなくらいですから。だから強い岡田が戻ってくれば、はっきり言って面白いですよ。

 相手の五十嵐選手はバリバリの日本ランカーですから、これは岡田にとってもビッグチャンス。しっかり調整して勝つことができれば、長いブランクを取り戻すのに充分なものが得られるのではないでしょうか。
<第3試合 8回戦>
上間 大貴(大橋) VS 小室 裕一郎(新松戸高橋)
 この試合って第3試合なんですけど、実は僕が裏メインとして密かに期待している好カードなんですよ。何故かっていうと、覚えてられる方も多いと思いますが、対戦相手の小室選手って僕の先輩にあたる有永 政幸さんと2年前に対戦しているんですよ。

 その当時の状況を振り返りますと、小室選手は徹底したヒットアンドアウェーで当時世界6位だった有永さんを翻弄し、完封勝ち寸前のところまで追いつめているんですよ。結果的には有永さんが起死回生の左ボディを炸裂させて逆転KO勝ちしたんです。でもその後ウィークポイントを満天下に晒してしまった有永さんは連敗を続け、引退を余儀なくされたんですよね。だからある意味、有永さんがリングを去る原因を作ったのは小室選手と言えるかもしれないですよね。

 もっとも勝負の世界なんですから、有永さんの恨みをはらそうなんてことを思っていませんけど。でも大橋ジムと因縁浅からぬ小室選手と、破壊児・有永さんの後輩であり、同じサウスポーのラフファイターである悪魔王子が時を経て戦うというのは、何とも感慨深いですね。

 (現在次点ぐらいに甘んじていますが)常に日本ランキングの常連である小室選手を倒せば、前項の岡田同様、上間にとってもステップアップする絶好のチャンスですから、是が非でも頑張ってほしいですね。

 正当派ボクサーが得意のフットワークで悪魔王子を封じ込めるか、上間が有無を言わさぬ残虐ファイトで優等生を血の生賛(いけにえ)にするのか、いまからゴングが待ち遠しいですよね。
<第1、2試合 東日本新人王トーナメント4回戦>
松岡 政(大橋) 
森島 勇治(大橋)
 今回の興行はホントに豪華ですよね。だって大橋ジムのビジュアルNo1松岡さんが第2試合から登場なんですから。女性ファンの方には是非とも早めに会場入りしてほしいですね。今回は新人王公式戦ということもあり、協会によって無造作に選ばれた相手との戦いなので、ここで改めて松岡さんの強さがはっきりと証明されると思います。

あの超ド級の破壊力と(甲子園仕込みの)運動神経を持ってすれば、このクラス(4回戦)ではまったく問題ないでしょう。



 森島選手はデビューからの2試合で、相手のタイプに応じて無難に戦い抜く、調整力を評価していたのですが、最近のスパーではアグレッシブに前に出て、相手の攻撃を潰すという新しいスタイルを確立しつつありますね。とにかく森島選手には第1走者として良い試合をして勝ってもらって、良い大会ムードを作ってほしいですね。
<P・S>
 とにかく今回は川嶋さんが引退されて初の興行ということで、これからの大橋ジムを支えていく若い力を再確認していただく絶好の機会だと思っています。全てのカードに個々の選手が現在背負っているテーマが隠し味のように入っているところにも、プロモータでもある大橋会長の意気込みを感じずにはいられません。だからという訳ではないですけれど、今回の試合(特に僕の)は本当に多くの方に見ていただきたいと思います。

 それでは4月30日に後楽園ホールでお会いしましょう。
大橋ボクシングジム 八重樫 東
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大橋ボクシングジムファンクラブ事務局